ウォーレン・バフェット氏が2025年のバークシャー・ハサウェイ株主総会で引退を発表し、日本の総合商社株への関心が再び高まっています。彼が投資していた5大商社(五大商社)は、それぞれ独自の強みと戦略を持ちます。本記事では、バフェット氏の引退と商社に関する発言を切り口として、5大商社の特徴と今後の投資ポイントについて解説します!
バフェット氏が引退発表時に語ったこと!
バフェットが引退を発表し、後継者を指名
ウォーレン・バフェット氏、2025年末でCEO退任を発表
2025年5月、バークシャー・ハサウェイの年次株主総会において、ウォーレン・バフェット氏(94歳)は、2025年末をもって最高経営責任者(CEO)を退任する意向を正式に発表しました。バフェット氏は、約60年間にわたり同社を率い、バークシャーを世界有数の投資会社へと成長させました。退任後も株式を保有し、アドバイザーとして会社に関与し続ける予定です。
後継者はグレッグ・アベル氏:エネルギー事業から全社を統括する実力者
人物像と経歴: グレッグ・アベル氏はカナダ出身のビジネスリーダーで、アイオワ大学で会計学の学士号を取得しています。彼はエネルギー分野で長年の経験を持ち、1999年にバークシャー・ハサウェイ傘下のエネルギー会社であるミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス(現バークシャー・ハサウェイ・エナジー)に入社しました。その後、同社のCEOや会長などの要職を歴任し、再生可能エネルギー事業の拡大などに大きく貢献しました。
バークシャー・ハサウェイでの役割: 2018年、グレッグ・アベル氏はアジット・ジェイン氏と共にバークシャー・ハサウェイの副会長に任命されました。。2000年にバークシャー・ハサウェイがMidAmericanの支配権を取得し、同社は後にバークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)と改称されました。アベル氏は2008年から2018年までBHEのCEOを務め、同社を多角的なエネルギー企業へと成長させました。2018年にはバークシャー・ハサウェイの非保険部門を統括する副会長に昇進し、鉄道、食品、アパレル、小売など多岐にわたる事業を管理してきました。
後継者に経営モデル/投資哲学の継承を期待
バフェット氏からのお墨付き
バフェット氏自身も、グレッグ・アベル氏を後継者として高く評価する発言を繰り返し行っています。アベル氏は、緻密な分析力と実行力、そして現代的なビジネスに対する深い理解を持つ経営者として知られています。バフェット氏から「賢明で愚かなことをしない人物」と評されており、同社の分散型経営モデルと長期的な投資哲学を継承することが期待されています。なお、保険部門を統括するアジット・ジャイン副会長(69歳)も後継者候補として名前が挙がっていましたが、バフェット氏は年齢を考慮し、より若いアベル氏を選定したと述べています。
5大商社について言及
50年、あるいはそれ以上保有と発表
バフェット氏は、バークシャー・ハサウェイが保有する日本の5大商社の株式について、「50年、あるいはそれ以上保有する可能性がある」と述べ、長期的な投資方針を明確にしました。2024年末時点で、バークシャーのこれら商社への投資総額は235億ドルに達し、保有比率は最大で9.8%にまで引き上げられています。バフェット氏は、これらの商社が多角的な事業展開を行う「総合商社(sogo shosha)」であり、バークシャー自身の多様な事業構造と類似している点に魅力を感じていると述べています。
後継者であるグレッグ・アベル氏も、これらの投資を長期的に維持し、関係を深めていく方針を示しています。アベル氏は、商社との関係構築や将来的な協業の可能性についても前向きな姿勢を示しており、バフェット氏の投資哲学を継承する意向を明らかにしています。
協業も視野
バフェット氏は、商社との協業の可能性についても言及しています。2023年に来日した際、伊藤忠商事の鉢村剛CFOとの会談で、商社への投資に満足しており、長期的に株式を保有する意向を示したと報じられています。また、商社の経営陣との間で協業の可能性についても話し合いが行われており、具体的な分野は未定ながら、今後の展開が期待されています。
三菱商事の中西勝也社長は、バフェット氏が同社の事業モデルや中期経営計画に深い理解を示していたことを明かし、協業について「できればいいなという話があった」と述べています。また、住友商事の諸岡礼二CFOも、バフェット氏との会談が「極めて友好的な雰囲気」で行われたとし、協業について前向きに検討する意向を示しています。
なぜバフェットは「日本の総合商社株」を買い続けるのか?注目の理由を徹底解説!
2020年以降、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが日本の5大総合商社(伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事)に投資し、2024年には保有比率を9.8%まで引き上げるなど、その姿勢は一貫しています。そして2025年の株主総会では「50年保有してもいい」と発言し、後継者のグレッグ・アベル氏もその方針を引き継ぐと明言しました。
では、なぜ世界有数の投資家が、あえて日本の総合商社にこれほど強い信頼を寄せているのでしょうか? その理由を4つの視点から解説します。
評価されてこなかった「コングロマリット経営」が再評価の時代に
総合商社は、多角的に事業を展開する「コングロマリット(複合企業)」型の経営が特徴です。エネルギー、金属、食料、インフラ、物流、金融、IT、アパレルなど、あらゆる業種にまたがる投資と商取引を行っており、経済の“総合窓口”とも言える存在です。
これまでの投資市場では「コングロマリット・ディスカウント(企業価値が純資産よりも割安に評価される)」の影響で、商社株は敬遠されることも少なくありませんでした。しかし近年、資源価格の上昇や地政学的リスクの増加などにより、分散型・資源含みの企業構造がむしろ安定成長に寄与する点が見直されています。
投資体力と子会社の経営能力が抜群
バークシャーが高く評価するポイントの一つが、「商社の資金調達力と投資執行能力」です。自己資本比率が高く、財務の健全性に優れた商社は、数千億円規模のM&Aや海外インフラ事業などにも迅速に対応できます。
資源と非資源のバランスが経営安定に寄与
総合商社は、鉱物、石油、天然ガスといった資源分野に強みを持つ一方で、リスク分散のために食料、医療、生活インフラ、ITなど非資源分野にも幅広く進出しています。この構造こそが、変動の激しい国際情勢の中で企業価値を維持・成長させる源泉となっています。
特に三菱商事や三井物産は資源分野に強く、伊藤忠や丸紅は食料・繊維などの非資源分野で高い競争力を発揮しています。このような分野横断的な収益源の多様性は、バークシャーのようなリスク分散型ポートフォリオを志向する企業にとって非常に魅力的です。
「商売あるところに商社あり」——世界経済の最前線で稼ぐ組織
商社は単なる仲介業者ではなく、世界中の“商売が生まれる現場”に人材を送り込み、現地企業と直接組んでビジネスを作り上げることができます。新興国のインフラ開発から先進国の再生可能エネルギー事業まで、幅広い案件に関与しており、「商売があるところに必ず商社あり」と言われるほどです。
このグローバルな現場主義と経済的柔軟性は、米国内で鉄道、保険、エネルギーなど多様な事業を運営しているバークシャーの哲学と非常に似通っています。実際、バフェット氏は「商社はバークシャーと同じように構成された企業」とまで語っています。
まとめ
バークシャー・ハサウェイが日本の総合商社株を買い増し、今後も長期保有すると語る背景には、これらの企業がもつ「分散的で実行力のある経営モデル」と「地球規模のビジネス遂行能力」への絶対的な信頼があります。
バフェット氏が長年重視してきた「理解できるビジネスへの投資」「優秀な経営者が率いる企業」「財務的に健全な企業」という3条件に、日本の総合商社はすべて合致していたのです。
5大商社の特徴を徹底比較!企業文化・事業構成・海外展開から見る投資ポイント
総合商社が注目される理由として、コングロマリット経営の再評価や資源・非資源分野のバランスなどを取り上げました。今回は、各商社の企業文化や事業ポートフォリオ、海外展開状況などを比較し、投資を検討する際のポイントを整理します(時価総額順)。同じ総合商社でも中身は全く異なるのです!
伊藤忠商事:非資源90%、生活密着型で安定成長
- 資源と非資源の比率:資源 10% / 非資源 90%
- 事業ポートフォリオ:
- 繊維:約2割
- 食料:約2割
- 住生活:約1割強
- 情報・金融などその他:残り
- 海外売上高比率:約65%
- 為替影響:1円の円安で営業利益が約20億円増(参考値)
三菱商事:資源50%、バランス型の最大手
- 資源と非資源の比率:資源 50% / 非資源 50%
- 事業ポートフォリオ:
- 天然ガス・金属資源:約3割
- 化学品・産業インフラ:約2割
- 食品・生活産業:約2割
- 海外売上高比率:約70%
- 為替影響:1円の円安で純利益が約30億円増(推定)
3. 三井物産:資源55%、資源強めのグローバル商社
- 資源と非資源の比率:資源 55% / 非資源 45%
- 事業ポートフォリオ:
- 金属資源・エネルギー:約4割
- 化学品・食料・機械・インフラ:約3割
- 海外売上高比率:約65%
- 為替影響:1円の円安で純利益が約25億円増(推定)
住友商事:資源45%、非資源重視の堅実経営
- 資源と非資源の比率:資源 45% / 非資源 55%
- 事業ポートフォリオ:
- インフラ・建設機械:約2割
- 金属・エネルギー:約2割
- メディア・生活関連:約1割
- 海外売上高比率:約60%
- 為替影響:1円の円安で営業利益が約10〜15億円増(推定)
丸紅:資源35%、非資源重視の成長型
- 資源と非資源の比率:資源 35% / 非資源 65%
- 事業ポートフォリオ:
- 食料:約2割
- 化学品・生活産業:約2割
- エネルギー・インフラ:約1割強
- 海外売上高比率:約65%
- 為替影響:1円の円安で営業利益が約15億円増(推定)
今後の展望!商社株の未来はどう動く?
総合商社株は、バフェット氏による継続保有の明言と、国内外の経済・為替情勢を背景に、今後も注目を集め続けると見られます。短期的には為替や国際政治の影響を受けやすい一方、中長期的には世界経済と資源トレンドの中核を担う存在として、堅実な成長が期待されます。
今後の商社株の行方
バフェット効果は絶大
ウォーレン・バフェット氏が2024年のバークシャー・ハサウェイ株主総会で自身の引退を表明した際、「日本の商社株は今後50年保有する価値がある」と発言し、後継者のグレッグ・アベル氏もその方針を継承することが明言されました。現在バークシャーは5大商社すべてに投資しており、合計で約1.6兆円(2024年時点)を超える規模となっています。
これは「単なる配当狙い」ではなく、「日本の商社が持つ持続的なビジネスモデルと世界的な調達・販売網」に対する長期的信頼の表れです。バフェット氏の「長期目線」は、日本の投資家にとっても大きな安心材料となっており、これが「バフェット効果」として株価にも反映されています。
協業も視野に
バフェット氏は、単なる株主としての立場にとどまらず、今後は「商社との協業も視野に入れている」と発言しています。これは、バークシャー傘下の事業(鉄道・エネルギー・保険など)と日本の商社のネットワーク・現地展開力を組み合わせることで、より効率的なグローバル投資や物流戦略が可能になるという期待につながります。
例えば、エネルギーインフラや穀物調達、次世代素材などの分野で、すでに各商社が展開しているプロジェクトと米国企業が連携することで、新たな収益機会の創出も見込まれます。
短期は為替と政治、長期はトレンド
短期的には為替と地政学リスクがカギ
商社は多くの事業をドル建てで展開しているため、為替の影響は避けられません。1ドル=160円水準が続けば、輸出系の非資源事業にはプラスに働く一方で、輸入関連にはコスト圧力がかかる可能性もあります。また、中東情勢や米中関係、資源国の政情不安は、資源価格の変動リスクとして短期的な業績に影響を及ぼします。
長期的には構造変化に適応できる企業が強い
脱炭素、AI・DX、人口減少・高齢化といった長期トレンドに商社はすでに対応を始めています。特に非資源分野でのM&Aやスタートアップ投資、再エネ・インフラ事業など、「資源以外の柱」を育てている点が、今後の競争力に直結します。
資源価格のサイクルに左右されがちなイメージもありましたが、非資源ビジネスの比重を高めた現在の商社は、「総じて強い」といえます。これが、海外機関投資家からの評価上昇にもつながっています。
商社株に投資するリスクとリターンとは?今後の判断軸を整理!
商社株は配当利回りの高さやグローバルな収益構造、そして「バフェット効果」による信頼感から、個人投資家にとっても魅力的な投資対象となっています。しかし、当然ながらノーリスクではありません。ここでは、投資判断における観点をリスクとリターンの両面から整理します。
リターンの観点:商社株が持つ魅力
高配当と安定的なキャッシュフロー
5大商社の平均配当利回りは約3.5〜4.5%(2025年3月期見通し)と、TOPIX平均を上回ります。安定した資源・非資源ビジネスに加え、連結子会社からの収益がキャッシュフローを下支えしています。
バリュエーションの割安感
PBR(株価純資産倍率)は2024年時点でまだ1倍以下の企業も多く、資産に比して株価が割安と見なされています。岸田政権が主導する「PBR1倍割れ企業への改革圧力」もあり、自社株買いや資本効率の改善が進む可能性があります。
グローバルな経済成長を取り込める構造
食料・資源・インフラ・エネルギーといった商社の主要ビジネスは、いずれも世界人口の増加や都市化、脱炭素といったトレンドに直結しています。海外売上比率が60〜70%に達する企業も多く、日本経済だけに依存しないのも強みです。
リスクの観点:注意すべき要素
為替変動の影響
多くの商社はドル建てで資源を取引しており、円高局面では業績に逆風となります。目安として、1ドル=1円円高になると各社で数十億円規模の営業利益が吹き飛ぶ可能性もあります。為替ヘッジなどで対応しているものの、影響は無視できません。
資源価格と地政学リスク
資源ビジネスは国際的な政治・紛争の影響を受けやすく、原油・天然ガス・鉄鉱石などの価格が急落した場合、資源系商社(特に三井物産・三菱商事)には大きな打撃となる可能性があります。
3. 非資源ビジネスの育成スピード
商社は近年、非資源分野へのシフトを進めていますが、その成否は将来的な競争力に直結します。特にIT・再エネ・ヘルスケアといった成長分野での事業構築には、時間と戦略が求められます。失敗すればリスク資産の増大につながる点も留意が必要です。
総合的に見ると?
短期的なボラティリティ(変動性)はあるものの、中長期では堅実な成長と高配当が期待できるのが総合商社株です。特に2025年以降は、世界的なインフラ投資、資源循環、人口動態といった社会テーマへの対応力が評価されていくでしょう。バークシャー・ハサウェイのような長期投資の視点が今こそ参考になります。
まとめ:今こそ考えたい、商社株への長期投資
ここまで、総合商社株がなぜ注目されているのか、個社の特徴、そしてリスクとリターンについて整理してきました。日本の総合商社は、単なる「資源依存型の大型企業」ではなく、今や世界経済の変化を取り込みつつ、着実に進化する「分散型ビジネスモデル企業」へと進化しています。
投資判断のポイント(総まとめ)
観点 | 内容 |
---|---|
バフェット効果 | 世界的な長期投資家が継続保有を宣言し、信頼性と注目度が高い。 |
高配当と財務健全性 | 配当利回りは平均3.5〜4.5%、自己資本比率も高く、安定的。 |
非資源へのシフト | 食品・インフラ・再エネなど成長分野の取り込みが進行中。 |
海外展開力 | 売上の6〜7割が海外。円安は追い風となるケースが多い。 |
短期リスク | 為替、資源価格、地政学などによる変動には要注意。 |
投資スタンスのヒント
- 長期目線のインカム投資に最適
安定配当と着実な事業成長が見込まれるため、5年・10年単位での保有に適しています。 - 個別銘柄選定の観点
資源比率が高い三井物産・三菱商事は資源価格の回復局面で強く、非資源に強い伊藤忠や丸紅はディフェンシブな相場での安定性が期待されます。 - 分散投資を前提に
バフェット氏と同様、複数社に分散して保有することで、個別リスクを低減しながら商社全体のトレンドを取り込む戦略も有効です。
結論:商社株は「成熟と進化」の両方を持つ稀有な存在
今の日本市場において、「成熟企業でありながらも変化への適応力を持つ企業群」は貴重です。総合商社は、世界の変化とともに事業を変え、収益源を育て、世界中でネットワークを築く力を持っています。
バフェット氏の言葉を借りれば、「50年後にも価値を生み出す」企業群。それが日本の総合商社なのです。
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